『秘密』
作者:東野圭吾 文春文庫
お気に入り度:★★★★★★★★★★(10点中/10点) <あらすじ>
妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な”秘密”の生活が始まった。(文庫版 裏表紙より)
<感想など>
もともと、映画になったというのをず~っと以前に知っていて、しかもその主演が広末涼子だったので、かなり敬遠していました(ファンの人には申し訳ないですが、あまり好きではなかったので・・・)。なので、東野圭吾さんの他の作品をよく読むようになって、ようやく「『秘密』って東野圭吾なんだ。。。」っていう感じで知り、ネットとかでなかなか評判が良かったのもあって読みました。
感想としては・・・東野圭吾さんの作品の中で一番好きな作品であるだけでなく、今まで読んだ中でもかなり好きな作品です。
設定は”娘の体に、妻の魂が乗り移る”というようなSFチックな者なのですが、内容としては一つの夫婦の愛情の物語で、悲しくもあり、可笑しくもあり、そして最後にはとても切ない気持ちになります。
そもそもの設定から、展開しだいで悲劇にも喜劇にもできそうなストーリーを単なる悲劇でもなく喜劇でもない作品にできるところが、東野圭吾さんの力量なんだな~っと感じられた良作でした。
↓以下ネタバレのため反転させてます。核心にせまってるので注意を。
”自分が愛する者にとって幸せな道を選ぶ”---娘と妻を奪った事故の相手が過去に言った言葉。それを知ったときに「妻のため」を第一に考え父親として接することを決断した夫。そしてそれを感じ「夫のため」に娘になりきることを決断した妻。それを読者に突きつけるタイミングと、タイトルの『秘密』の意味が分かる瞬間。ホントに見事でした。
ラスト、平介が直子の最高の思いやり=愛情を知ったときの感激と、その事実による喪失感。切ないラストですが、大好きです。